S.T様
都内で在宅診療所に勤務
医師(家庭医)
- 在宅医療に携わったきっかけは?
10数年以上前ですが、私は田舎の急性期で初期研修を受けまして、その時の患者様であった癌末期のおばあちゃんが一つのきっかけなんです。
その方は亡くなる前に「一度でいいから家に帰ってそばを食べたい」と希望されていました。私も初めてなのでどうしていいかわからない状況でしたし、当時は今よりも在宅医療が広まっていない状況でしたので、ご自宅に帰すという考え自体もなく、結局その患者様は病院で、希望するお蕎麦も食べれずお亡くなりになりました。
その時からですね。亡くなっていく方のため、そんな希望すら叶えてあげられない自分とは、医師とは何なんだろうと思ったことが、在宅医療に対して想いが強くなったきっかけでした。
- 在宅医療の魅力ややりがいを教えてください。
在宅医療の魅力は、やはり「患者様の家に行く」というところです。病院で看る患者さんの姿というのは「よそ行きの姿」なんです。その人の1つの側面だけにすぎません。
しかし家に行くと彼らの家なので、目も耳も聞こえない人が、しっかりと生活しているのを見ることができます。それがその人の本当の姿であり、人生がそこにあります。そしてそれを踏まえての医療となるわけです。
病院は治すところですが、在宅は寄り添うという側面が強く、患者様の人生を見ることができるのが魅力ですね。
あと、寄り添うとはいえもちろん治せるものは治していくのですが、一人で多くの疾患を診ていくので医療としての難易度もそれなりに高いと思っています。そういうところもまた魅力ですね。
- 今の働き方を教えてください。
1日に4~5件ほど居宅の患者様のところに訪問しています。今の診療所はドライバー、看護師も一緒に回る形です。
日中は常勤の医師が回っていて、夜間の緊急対応用などは非常勤の医師が主体になっています。以前いたところでは、医師一人で回りましたし、夜間の緊急対応も当番制で回していました。
一人で回るのはそれはそれで気が楽というか。良いものでしたので一長一短ありますね。